南青山変形性股関節症でもできるパーソナルトレーニング
1. PLAN(分析と戦略):軟骨を守るための「3つの絶対条件」
変形性股関節症(以下、股関節症)のクライアントに対し、スクワットやランジを安易に処方するのは禁忌です。まず以下の3点を評価・計画に組み込みます。
- 「ジョイント・クリアランス」の確保: 股関節臼蓋(受け皿)と大腿骨頭の間の隙間を広げる意識。詰まった状態で動かすと摩耗が進むため、牽引方向の意識を持たせる。
- 骨盤のアライメント修正: 多くの股関節症患者は、痛みを避けるために骨盤を前傾または後傾させ、代償動作を行っています。これが逆に特定の部位への負荷を集中させます。
- 「非荷重」から「部分荷重」への段階的移行: いきなり立位で動くのではなく、まずは重力を排除した状態(臥位)でインナーマッスルを活性化させる計画を立てます。
2. DO(実行):関節に優しい「裏技的」再建アプローチ
股関節に直接的な「衝突」を起こさず、周囲のサポートシステムを構築する5つのメソッドです。
① 骨盤底筋群と腹横筋の「コア・スタビリティ」
【メカニズム】 股関節は骨盤に深く関与しています。体幹の深層筋が働かないと、骨盤が不安定になり、股関節はその不安定さを補うために周囲の筋肉(外側広筋や筋膜張筋)をガチガチに固めて守ろうとします。これが「詰まり感」の正体です。
【実践方法】
- 仰向けで膝を立て、骨盤をニュートラル(床と平行)に保ちます。
- 息を吐きながら、おしっこの穴を締めるように骨盤底筋を引き上げ、同時にお腹を薄くします。
- この「内側からの支え」がある状態で、片脚を数センチだけ浮かせる(レッグレイズの初期段階)練習をします。
② 中臀筋後部繊維の「等尺性収縮」
【メカニズム】 股関節の外側を支える中臀筋が弱いと、歩行時に骨盤が反対側に落ち込み(トレンデレンブルグ徴候)、股関節への剪断力が激増します。しかし、足を大きく開く運動は痛みを伴うことが多いため、「動かさないトレーニング」が有効です。
【実践方法】
- 壁の横に立ち、痛い方の足の外側を壁に押し当てます。
- 膝を伸ばしたまま、足を外側に開くように壁を5秒間強く押します。
- 実際には足は動きませんが、お尻の横に強い収縮を感じるはずです。これを10回繰り返します。
③ 腸腰筋の「遠心性」コントロール
【メカニズム】 股関節症では、股関節を曲げる筋肉(腸腰筋)が短縮し、固まっていることが多いです。これを無理に伸ばすのではなく、コントロールしながら使うことで、大腿骨頭を正しい位置(中心化)に保持します。
【実践方法:スライディング・レッグ】
- 仰向けで、足の裏に滑りやすいタオルを置きます。
- 腹圧をかけたまま、ゆっくりと踵を滑らせて足を伸ばし、ゆっくりと戻します。
- 常に「股関節の付け根にスペースがある」イメージを持ちながら行います。
④ 膝下・足首のアライメント修正
【メカニズム】 股関節の痛みをかばうと、足首が外返し(回内)になりやすく、それが膝のねじれを生み、最終的に股関節の負担を倍増させます。
【実践方法】
- 椅子に座り、足の指をグー・チョキ・パーと動かします。
- 特に親指の付け根(母趾球)で地面をしっかり捉える練習をします。
- 足裏のアーチが復活すると、歩行時の衝撃吸収が股関節ではなく足元で行われるようになります。
⑤ 皮膚・筋膜の「リリース・バイ・ムーブメント」
【メカニズム】 手術痕がある場合や、長期の痛みで皮膚が癒着している場合、その突っ張り自体が関節の可動域を制限します。
【実践方法】
- 足の付け根(鼠径部)の皮膚を優しくつまみ上げます。
- つまんだまま、痛みのない範囲で膝を小さくゆらゆらと動かします。
- 皮膚が動くことで、その下の筋膜の滑走性が改善し、足が軽く上がるようになります。
3. CHECK(評価):痛みの閾値と可動域のモニタリング
トレーニング中および終了後に、以下の項目を厳密にチェックします。
- 痛みの質(VASスコア): 運動中の痛みが「鋭い痛み(ナイフで刺すような)」でないか。重だるい感覚であれば許容範囲とします。
- 翌日のフィードバック: 運動後ではなく、翌朝に痛みが増悪していないかが最大の判断基準です。増悪している場合は、強度が過剰であったと判断し、プランを修正します。
- 歩行パターンの変化: 鏡を見て、歩く際に肩が左右に揺れていないか(ドゥシャンヌ歩行の有無)を確認します。
4. ACT(改善・定着):一生自分の足で歩くための環境整備
渋谷・港区といった坂道や階段が多いエリアでの生活を想定した定着策です。
- 靴のフィッティング: クッション性の高いソール、かつ踵がしっかり固定される靴を選定します。インソールによるアライメント補正も検討すべき重要なACTです。
- 「座りすぎ」の排除: 長時間の座位は股関節を屈曲位で固めます。30分に一度は立ち上がり、裏技②の等尺性収縮を行うことをルーチン化します。
- トレーナーとの伴走意識: 股関節症は進行性の疾患である場合も多いため、「治す」だけでなく「進行を遅らせ、機能を維持する」という長期的なパートナーシップをクライアントと共有します。
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